2016.1.03

APMoA Project, ARCH vol.18「 DEPTH – Dynamite Pigment – 」 愛知県美術館

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開催概要
水戸部七絵 個展 APMoA Project, ARCH vol.18「 DEPTH – Dynamite Pigment – 」
会期:2016年1月3日(日) – 2月28日(日)
時間:10:00~18:00 金曜日は20:00まで
休館日:月曜日

会場
愛知県美術館 [愛知芸術文化センター10階]展示室6
〒461-0005 愛知県名古屋市東区東桜1丁目13−2

Press Release

顔の同一性

副田一穂(愛知県美術館学芸員)

鉄製のパネルから突き出したそれは、水戸部七絵によると「顔」以外のなにものでもないのだが、そのサイズといい生々しい絵具の肌理といい、一瞥では全体を把握させず、目鼻立ちを捉えたり表情を読み取ったりされることを頑なに拒絶しているかのようだ。そもそもこのタブローは、垂直に立てることさえ物理的にできない(そんなことをすれば、たちまち「顔」はずり落ちて、床の上でグズグズに崩れてしまうだろうということは容易に想像がつく)。湖面に映る自らの姿から目を離すことのできないナルキッソスにとって、風や魚が起こすさざ波はまなざしの先の美少年のイメージを毀損するものにしかならないように、再現的なイメージの産出と筆触とは本質的に相容れない。過剰な筆触は、イメージを象っているはずの輪郭を、そして「顔」に本来あるべきいくつかの開口部の一切を、無数の絵具の波のなかへと沈めてゆく。しかし同時にその筆触のひとつひとつこそが、「顔」をわたしたちの方へとせり上がらせている当のものでもある。鏡を挟んで対峙するというよりも、暗がりのなかで触って確かめるようにしか捉えることのできないこの「顔」は、折り重なった絵具の奥底と表面とのあいだで行ったり来たりを繰り返しながら、いつまでも「○○氏の顔」という誰かの肖像画にはなりきれないでいるかのようだ。

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出展作品一覧

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