開催概要
水戸部七絵 個展 「War is not over」
会期：2022 年6月4日(土) – 7月2日(土)
時間：12:00〜18:00
定休日：日、月、祝日
会場
void+
東京都港区南青山3-16-14-1F
Artist Statement
”War is not over”
戦争に対する表現として、私が選んだのはもちろん絵画だった。絵画の「原理主義」を引き継ぎ、絵画の条件に従っているつもりだ。「彫刻のようだ」としばしば言われるが、私にとっては絵画以外のなにものでもない。
素手で絵の具を掴んで描くのはその方が直感的に描きやすいからであって、厚塗りになるのは何度も手直しを加えるからであり、何度も手直しを加えるのは人物を描くことに葛藤——対象の肌の色、顔の造形のひとつひとつに迫られる美醜の判断、自らのコンプレックス、果てはその人物の人生そのものに関わる「人物画」のおもさ——があるからだ。「99％の模倣と1％のデフォルメ」を往復しながら対象との距離を探り、画面全体の調和を認めたときに私は描くことを止める。
[Read More]芸術は戦争に対して無力か。
かつて芸術家たちはそれぞれの方法でもって暴力に対峙した。エリュアールは詩集を戦地にばら撒き、ピカソはその惨状を描いた。そしてジョンとヨーコは”War is over”と高らかに歌った。
私の絵画はどうだろうか。戦地にあれば、作品によってはその厚さ、重さから邪魔にはなるだろうか。しかし戦車はすべてを蹂躙して進軍する。絵画は通常、その架空世界に人を引き込む力はあっても、現実世界に直接に作用する力を持たない。私はそこから「突き出す」ことを試みたい。
本展覧会では、ジョンとヨーコの『ベッド・イン』(1969)を参照する。これは二人がハネムーンの最中、ホテルの一室に記者たちを呼び、ベッドの中から平和について語ったパフォーマンスだ。かつてジョンは”imagine”と繰り返し歌い、ヨーコは”YES”と天井に描いた。今作は、「夢」を空想し強く肯定する二人の態度とは異なっているのかもしれない。『ベッド・イン』の世界を、あるいは二人を元にした絵画、あるいはアッサンブラージュされた既製品——現実世界に突き出している——これらはあくまで「現実」を意識させるものとして描いた。
絵画はフィクションだが、私たちは現実世界を無視できない。戦争はいまだ終わらない。
Nanae Mitobe
Text edit ：Shuhei Tsukishima
void+
