とプロジェクト発起人である藤元氏がステートメントで述べている。アーティストは「新しい価値観」をここでは持ち寄り、提示する必要があるようだ。だが、「資本主義の終わりより、世界の終わりを想像するほうが容易い」というよく知られた言葉があるように、経済合理性の重力から抜け出すのは至難の業である。そこで、ソノアイダ第3期 やんツー×水戸部七絵『Y.N.W.P (Yang02 × Nanae Work in Progress / Public)』では「How to turn capital into garbage(いかに資本をゴミに変えるか)」というテーマを掲げ公開制作を試みる。有益なもの(資本)から無用の長物(ゴミ)を生み出すという心構えは「現代美術はゴミ/詐欺」とアートワールドの外からよく聞こえてくる揶揄を、字義通りそのまま受け止め肯定するような態度にもみえる。しかしそれは、資本主義の引力から開放されうる、新しい価値観や考え方として機能するかもしれない。合理主義を唯一の価値と錯覚し、思考停止した脳を解きほぐすための呪文として。あるいは、利潤を求めて市場を徘徊する、形式主義的絵画ゾンビのための特効薬として。
震災の時もコロナ禍でも、アーティストには何ができるのかと災禍の度に自問するわけだが、2020年3月、ドイツの文化大臣モニカ・グリュッタースは「アーティストは今、生命維持に必要不可欠な存在」と断言した。それは「Your Necessity While Pandemic」と、遠く離れた国に住む私たちや、芸術の存在そのものに対する励ましのメッセージのように聞こえた。そして現在、東欧の国が戦争という新たな災禍に見舞われているが、ロシアのテニスプレイヤーがカメラのレンズに書いたメッセージに、私たちも「Yes, No War Please」と強く同意する。作品をつくる営みが資本を生み出し誰かの所有欲を満たすという目的を越え、危機的な状況でこそ必要とされる、普遍的な営みであることを信じ、それを示したい。